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Domino/Roland Kirk [JAZZ]

 

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奇人、変人、怪人、変態、異端。そして時には天才、鬼才だと…
人は自分の中の"常識"の範疇から逸脱している人のことを、こんな風に呼ぶことがある。
今は"超カワイイ"とか"まじヤバイ"とか言うこともあるらしい。
マルチリード奏者ローランド・カークのこのいでたちを見て、僕もそう思った。RolandKirk.jpg

テナーサックスに加えてサックスの一種であるマンゼロ、ストリッチという古代楽器を3本同時に吹いたり、フルートやリコーダーを鼻で吹きながら口で唄う。闇のように黒いサングラスをかけ、怪しげな帽子に濃い髭をたくわえた2メートルちかい大男。
首からはサックス3本をぶら下げ、フルート、リコーダー、サイレンホイッスルといった楽器を身体に貼り付けている。。。
まさに奇人変人であり、"まじヤバイ"ミュージシャン…というか、ただの受けを狙った一発芸人だと思った。
こんなのキワモノに違いない。
まるで宇宙怪獣キングギドラではないか。


どんな音楽よりも、アクロバティックで前衛的な"雑音"に近い音楽を想像する方が遥かに容易である。そんなローランド・カークのスタイルを、音楽ファンは『グロテスク・ジャズ』と呼んでいた。

 登らぬ馬鹿、二度登る馬鹿
これは富士山頂からの眺めは素晴らしく一度は登ってみるべきだが、登山の道中がキツくて二度とは登る気になれないというのが転じたことわざだ。一度やってみる価値はあるが二度やる価値はそんなにない という意味らしい。
ローランド・カークの『ドミノ』を聴いてみたのは、まさにそんな心境からだった。
聴かぬ馬鹿、二度聴く馬鹿 怖いもの見たさ 臭いもの匂いたさ。。。。

幼少の頃に、点眼薬の医療事故で両眼の視力を完全に失ったカークは、夢の中でいくつもの管楽器を同時に操る自分の姿を"見た"という。いくつもの楽器を身につけるのは、ステージで楽器を持ち替える時の盲目のハンデを補う為だとも言われている。
サクセロという古い管楽器を自分用に改造し、トレーニングを重ねて、驚異的な循環呼吸法(息継ぎをしないで吹奏を続ける呼吸法)まで会得したカークが発する音は、僕が想像していたものとは正反対にメロディアスで活気に満ちた"音楽"だった。
両眼に障害を負った黒人のカークにとって1960年代のアメリカが、彼が吹く旋律のように楽しく美しい世界であったとは思えない。
凄まじい集中力を要する音楽表現に、脳溢血で倒れながらも音楽を景気よく振りまき続けたローランド・カーク。
差別と偏見と奇異の視線を肌で感じながら、彼は心の眼で何を見ていたのだろうか。。。僕にはわからない。
ただひとつ分かったのは、僕が『二度聴く馬鹿』になったことだけだった。

ベストトラック
3.Time
4.Lament
9.I Believe in You


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