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逆光/日野皓正 [Book]

若いプレイヤーや音大の学生にも、こう言ってる。
「お前ら、敵を作れよ。八方美人になるなよ。ほとんどが敵でもいいんだから」って。
自分が真心をこめた音楽を一所懸命やっていれば、いずれは強い味方がひとり現れる。
敵が何千人いても、平気に思えちゃうくらいの強い味方。自分の人生を変えるような人だ。

CIMG3319.jpg


今年7月の発売以来ずっと気になっていた、ジャズトランペッター日野皓正の自叙伝『逆光』を読んだ。
思えばジャズやらフュージョンを聴き始めた頃、サックスのナベサダの次に日本のジャズミュージシャンとして名前を覚えたのがトランペットのヒノテルだった。まぁ世代的にはアルバム『シティ・コネクション』とか『デイドリーム』、あと『ピラミッド』あたりですかね僕は。その頃のアルバムは(ファンの間の評価は別として)フュージョンの作品として好きなので、今でも思い出したように聴いてるんだけど、なんといってもトランペット(コルネット)を構えるスリムな身体と帽子と口髭、そして聴き手を威圧するような鋭い視線がガキの目から見ても凄くカッコよかった。
そんな日野皓正も今年でもう66歳かぁ・・・と思いつつ本を開いた。

本は200頁に足りない程度でボリューム的にも多すぎず貧弱過ぎずてちょうど良い厚み(笑)。活字も、毎日の目の酷使で老眼気味の僕にも小さ過ぎず(笑)、数頁ごとに若くトンガってた頃やすっかり貫禄のついた最新のフォトが挿入されているのもいい。
戦後まもない少年時代のご両親や祖母上とのエピソードから始まり、プロになってからのヒノテルブーム、海外の大物ジャズマンと渡り合ったニューヨークでの暮らしと差別、奥様との出会い、そして最愛の弟”トコ”(ドラマー日野元彦)との別れだけでなく、自身の音楽観や楽器のこと、若いミュージシャンの日野流育成法などなど・・・それらが『くだけた口語体』で書かれていて、今の日本のジャズや世界平和を大真面目に、時に若いころの武勇伝や聴衆の摑み方をユーモアたっぷりに語る著者日野皓正の講演でも聞いているかのよう。実に読みやすくて止まらなくなる。そして日野皓正の真っ直ぐな人生観が、ジャズ(仕事)に対する愛情が、これからの日本のジャズを背負うであろう若者への熱い思いが…全くの畑ちがいではあるが、日々仕事をすることで報酬を受け取り暮らしている僕の心に染みるように伝わってきた。

アルバム『寂光』で前衛的ともいえる芸術世界に踏み込み『僕はこのアルバムで、65歳にしてやっと、60代の自分のスタイルを確立したと思えた』と語り、『いつまでたっても本当にヘタクソだなって思うけど、だからこそ、自分を高める努力を惜しみたくない。生きてる限りはね。』と、本は締めくくられている。

いや~、一気に読んでしまった。面白かった!つーか、ちょっと感動した。
ミュージシャンに限ったことではない話がたっぷりの本書、働く男は一度読んでおいて損はないと思う。

最後になりましたが、本書をブログで紹介して下さったsou-unさんのブログ「テンションノート・ジャズ・ブログ」に、感謝申し上げます。

80年代フュージョン全盛時代のアルバム『DAYDREAM』より。
S.ガッド、A.ジャクソンの重戦車のようなリズム、D.リーブマンのテナーソロが強烈!



石井彰(pf)とのデュオで完成させた
映画『透光の樹』より、メインテーマ『Ember』
サントラですが、好きな作品です




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コメント 11

ぷーちゃん

「八方美人になるなよ。ほとんどが敵でもいいんだから。」って、
確かに言えてます。実際には、実践できないしがない
サラリーマンの営業でした。トホッ。
( ̄▽ ̄;)!!
by ぷーちゃん (2009-10-08 01:10) 

土佐のオヤジ

『デイドリーム』や『ピラミッド』、懐かしいです。
昔よく聴きました。
この本、私もSOU-UNさん所で見かけて、気になってました。
是非読んでみたいものです。

by 土佐のオヤジ (2009-10-08 06:31) 

chako

「Ember」心が落ち着く曲ですね。
by chako (2009-10-08 11:14) 

sou-un

なちゃさん、こんばんは。
文中紹介、ありがとうございます!ほんと恐縮です。

『ピラミッド』は、私が日野さんを知った最初のアルバムで、自分もトランペットをやっていたせいか、
夢中になって聴いてましたね。
あの頃の日野さんや貞夫さんは、信じられないくらい豪華な外人ミュージシャン
を率いていて、内心、誇らしく思ったものです。
今と違って、テレビにも結構出てましたしね。

この本に書いてあることは、とても私にはマネできそうもありませんが(苦笑)、
ほんの少しでも役に立てたいところです。
by sou-un (2009-10-08 22:53) 

ayumu

いいっすね、ガッド&A.ジャクソン。前のめりな感じが懐かしいです。この頃の和製フュージョンは、グローバル化しようとかなり頑張っていましたよね。

by ayumu (2009-10-08 23:25) 

空兵ーS

80年代初めの頃でしたか、
琵琶湖、帰帆島での野外コンサートで初めて生に接しました。
強烈なリズムをバックに吹きまくっていた印象があります。
by 空兵ーS (2009-10-09 22:08) 

sak

おはようございます。
66歳なのですね
いつまでも若く、頑張ってほしいですね。
Emberを聴きながら、まったりした時間過ごさせていただきました
by sak (2009-10-11 07:40) 

なちゃ

コメントを下さった皆様、ありがとうございます。
いつもレスが遅くなり、大変失礼しています。

・ぷーちゃんさん、こんにちは
いやー、なかなか実践できませんよね。
でも『見てる人は見てる』ってことなんでしょうかね
お仕事頑張ってください

・土佐のオヤジさん、こんにちは
本当に面白い本でしたよ
日野さんのフュージョン作はレコードでしか持ってないのですが
CD欲しくなりました

・chakoさん、こんにちは
このての楽曲は
秋から冬にかけて、よく合いますね~

・sou-unさん、こんにちは
本の中でも『シティ・コネクション』が売れて暮らしが楽になった
みたいに書かれてましたね。
でもあまりフュージョン時代の話がなかったのは、あまり触れたくないのかな?
とか思ったり(笑)
僕的には、今の日本のサックスは逸材が多いように思いますが、トランペットって…どうなんでしょう?

・ayumuさん、こんにちは
リーブマンがテナーでフュージョン吹いてるってのも、なかなか珍しいですよね
この頃の和製フュージョンのアルバムには、勢いのようなものを感じます

・空兵ーSさん、こんにちは
日野さんのライブはまだ聴いたことがありませんが、やはり一度は行ってみたいです。
それにしても、還暦を過ぎての管楽器・・・しかもトップの座を譲らないって凄いですね。
ヒノテルもナベサダも。

・sakさん、こんにちは
ありがとうございます。聴いてもらえて嬉しいです^^
by なちゃ (2009-10-11 22:35) 

なちゃ

niceを下さった皆様、ありがとうございます。
by なちゃ (2009-10-11 22:36) 

ろじゃーす

お邪魔します

最新アルバム「寂光」で初めてヒノテルを聴いて感動したものです。ライヴにも行き、オーディオ(SACD)も整えて、トランペットも購入するほどハマッてしまいました。
もちろん「逆光」も購入しました。とても感動しましたね

素晴らしい記事でしたので感激でコメントしてしまいました。
2010年は新作が聴きたいですね
お邪魔しました~
by ろじゃーす (2009-12-21 18:47) 

なちゃ

ろじゃーすさん、はじめまして。
記事を褒めていただき、ありがとうございます。

楽器まで始められるとは、かなりハマられたのですね。
僕も、渡辺貞夫さんの影響でサックスを手に入れたので、お気持ち分かります。新作も年齢を言い訳にしないアグレッシブな音楽を聴きたいですね。
コメントありがとうございました。
by なちゃ (2009-12-23 16:29) 

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