Wait Till You See Her/John Abercrombie Quartet [JAZZ]
小さなせせらぎが
やがて大河となり
心に溢るるとき
ありきたりな言葉を
飾りしたためた
目に見えぬ紙飛行機がひとつ
愛しさをのせて
今宵も川面を渡り飛ぶ
橋の向こうのあの人に
届くやも知れぬと
Remembrance/Ketil Bjørnstad [JAZZ]
結び目のない
幾度かの刻の糸は
限りなく透明で脆くて
ほんの微かな揺らぎで
途切れてしまうのでしょう
陽だまりのような
微笑が
ひとつ ふたつ みっつ
まだ名づけられぬままの
Remembranceが
ひとつ ふたつ みっつ
その黒髪を切りそろえるように
忘れてしまえば 楽なのに
ベスト・トラック
2.Remembrance Ii
6.Remembrance Iv
1.Remembrance I
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Cloud Dance/Collin Walcott [JAZZ]
ぼくは浮かぶ雲
勝手に悦んでは
ふわふわ浮かれて
勝手に落込んでは
雨を降らすんだ
きみは碧い空
コトバは泡沫に
消えるけど
髪の頬の感触を
こんなにも指先に残す
ふわ、ふわ、ふわ
と
此処に
浮かんでいようか
もう少し
笑顔が見たいから
ただそれだけのこと
ベストトラック
3.Night Glider
2.Prancing
6.Eastern Song
All We Are Saying.../Bill Frisell [JAZZ]
うわ、なんか小っ恥ずかしいわ・・・そんなことってない?
ちょっと前に買ったんだけどね、ジャズの売場の一角にこの顔が陣取ってたもんで。
またもありがちなビートルズ曲のジャズコンピかと思いきや、よく見るとなかなか可愛いイラストなんで思わず連れて帰ってきちまった(金はちゃんと払った)。
ジャズの世界でもビートルズの楽曲はもちろん愛されていて、取り上げて演奏するミュージシャンも多いんだけど、この組合せはなかなか意外つうかさ。んー、ふたりの共通点みたいなのが思いつかないけど。でもまあ、よくよく考えりゃビートルズの歌に関してはミュージシャン的な共通点もへったくれもないわな。
とはいえ、どうにもひと筋縄でいかない感が強い(つーかそんなイメージしかない笑)個性派ギタリストのフリゼールが、アルバム丸ごとジョンレノンってことで、やはり興味が津々となる芸術の秋(もう冬だっつーの)。
16曲収録で全てジョンレノンの楽曲(Lennon-McCartney名義含む)。
ミュージシャンはGreg Leisz(Steel G, G), Jenny Scheinman(Vln), Tony Scherr(B), Kenny Wellesen(Ds)。
サウンドはシンプルでジャズというよりインスト・ロックって言ったほうがいいのかも。しかもなんかアメ~リカンというかカントリーっぽいというか。あくまでも原曲のメロディ重視なつくりでアドリブも控えめ。浮遊感のある独特なトーンでもって、とてもメロディを丁寧に弾いてる(というかギターで歌ってる)印象。それが聴いててなんとも心地よいんだな。バイオリンの起用も、その心地よさに輪をかけて成功している。
ジャズ的なアプローチで変にメロディをねじ曲げたりしてないのが好感が持てるっつーか、逆にフリゼールのジョンレノンへの敬意のようなものを感じる好盤っす。もうこれは「原曲の完成度の高さ所以」としか云いようがないよね。
それにしてもだ、この丸眼鏡、この鼻筋・・・通りすがりにこんなシンプルなイラスト見ただけで『あ・・レノンだ』って、僕でさえ直ぐに思えるんだよなぁ。やっぱりジョンレノンって男は、亡くなって30年以上も経った今でも、書いたメロディだけでなくて、その顔まで音楽ファンの心のどこかしらにこびりついてるんだろうね・・・・・今日(12月9日)は命日か。
ところでさぁ、裸のディスクがジャケットのいちばん奥まで入り込んでるもんで、取り出そうと指ねじ込んだら破れちゃったよ。
・・・んもー、だから紙ジャケきらい(笑)
ベストトラック
8. In My Life
4. Imagine
11. Woman
Come Today/渡辺貞夫 [JAZZ]
「痛みの度合いは 喜びの深さを知るためにある」
(アルバムライナーより。チベット格言)
”IN
TO TOMORROW” から ”COME TODAY”
へ・・・
人は皆、今日を生きて、明日を思い、また今日を迎える。生きている限り抗う術はなく、人はどうしようもなくそれを繰り返す。昨日(Yesterday)を今日にして生きることはできないのだ。そんな単純で当たり前な繰り返しの中で、やがてかけがえのない大切な人と出逢い、同じリフレインを奏でながら時間を刻む。それを繰り返せば繰り返すほど、ともに見届けた”今日”が多ければ多いほど・・・深い悲しみに見舞われることもある。
ちょうど2年前にリリースされた前作と全く同じメンバーで録られた続編的なアルバムではあるが、かなり雰囲気を異にしているように僕は感じた。
時には南半球の海の細波を、時にはアフリカの大地を、時にはロスの照りつける太陽を、時にはニューヨークの活気に満ちた雑踏を音にかえて、僕らに届けてくれたナベサダの音楽。僕が知る限りの、そんな渡辺貞夫の数多のアルバムの中でも、最も静かで・・・いや、上手くは云えないが、どこかしら『悲しみ』が漂っているというか、覆われている、というか・・・
前作『IN
TO
TOMORROW』の、よく晴れた朝をイメージさせる空色や、息子のような若さのメンバーに触発されたプレイに対して、本作での音像やジャケットの色調には、同じ日々を生きてきた最愛の人への、そして、あの日突如この国を襲ったあまりにも大きな悲しみへの、渡辺貞夫の思いが込められているのではないか・・・と、僕は想像する。
そういう意味では、ファンにとっても(少なくとも僕にとっては)忘れ得ぬアルバムのひとつになるだろう。
六十年もの間、ジャズを愛しジャズを生業とし続ける男の、通算71枚目のアルバム『COME
TODAY』。木管の鳴りを極めたかのようなアルトの音色が、自らのペンによる10曲全編で響きわたり、凡百な言葉以上に胸を熱くする。おそらく御夫人に贈られた⑨『She’s
Gone』の、神秘的ともいえる美しく深いサブトーンで奏でられるメロディは、男が人知れず流す泪の一すじ・・・僕には、そう聴こえてならない。
そして男は、また明日を見据えてジャズの道を歩き出すのだ。『Lullaby』(子守唄)の向こうにある”Tomorrow(明日)”が、より素晴らしき”Today(今日)”となって、訪れることを信じて。
ベスト・トラック
9.She’s
Gone
4.What I Should
5.I Miss You When I Think of You
Dreams So Real/Gary Burton Quintet [JAZZ]
浅い眠りに纏わり
髪を冷やす
さっき聴こえたのは
明星が暁の天で
たぶん
瞬いた音
そして現実は
また夢に還った
僕は少しだけ泣いた
きみの夢を見た
静かな
静かな朝に
60th Anniversary ORCHARD HALL TWO NIGHTS/渡辺貞夫 [JAZZ]
渡辺貞夫の久々の映像作品。
音楽家として第一歩を踏み出したのが1951年だから今年で60年、その記念作品だ。
月並みな言い方だが、本当に凄いとしか言い様がない。
DVD3枚組で、うち2枚が東京のオーチャードホールでのライブ映像。
加えて『Premium Gift SADAO WATANABE “History”』と題された特典ディスクが1枚。
2001年の50周年記念のステージを収めたディスク1は、ピーターアースキンらを従えたカルテットによるストレート・アヘッドなジャズを演じた前半と、ジャズマン渡辺貞夫が『世界のナベサダ』として大きく飛躍した所謂『フュージョンスタイル』での数々の人気曲を演じた後半の2セット。
ディスク2には、昨年2010年のクリスマスライブから、ラッセル・フェランテ(p,key)率いるイエロージャケッツの面々とのセッションが第一部、続く第二部は国立音楽大学の” New Tide Jazz Orchestra” と共に演じるビッグバンドサウンド。
まぁ早い話が2ステージ4通りのセッションを楽しめるという、実に濃い内容。そもそも日本のジャズっちゃあ、よほどの美女でもないかぎりPVだとか映像作品を出すって事にあまり期待できないジャンルなだけに、こりゃもうファンには堪らないプレゼントってわけ。
ディスク1のフュージョンセットは、こないだひと足先に手に入れた怪しいブート盤と比較しても、冒頭もエンディングも正規商品としてきちんと出来上がっていて、画質も音質もリマスタされている(当然か笑)ので満足度アップ。この年は自分も会場(大阪だけどね)に運んだだけに、見ていて『あれからもう十年なのか』てな感慨も。
ディスク2のイエロージャケッツとのセッションは、ボブ・ミンツァー(TS、EWI)との2管フロント。続いては、New Tide Jazz Orchestraのみの演奏を1曲挟んだ後に、若さ溢れるビッグバンドを従えての後半。粗削りながらも懸命にソロに挑む彼ら彼女らがなんとも微笑ましいし(ボブ・ミンツァーとのテナーバトルやっちゃってるし)、孫のような歳の学生相手に全身でもってコンダクトするナベサダの笑顔が実にカッコいい。まだまだアマチュアに分類される名もないミュージシャンの玉子たちを、こうして自己名義のコンサートに招いて共にステージ立つ姿に、ナベサダの音楽への懐の深さを感じるね。ミンツァーのEWIはちょっぴり残念かな。ナベサダのアルトの音色に比べると、電気楽器のEWIでは線が細くて、とても太刀打ち出来ていない。もっとテナーでぶいぶい吹いて欲しかった。
特典としてのディスク3もなかなか興味深い内容。ナベサダの60年の音楽歴を中心に、バークレー在学中の暮らしと様々な出会い、旅や写真への思いなどなどを、ご本人のトーク(インタビュー形式)で振り返る第一部、対して中川ヨウ氏との対談で『現在』を語る第二部を収録。まあ熱心なファンならとっくに知ってるような内容が大部分とはいえ、常に柔和な面持ちで言葉を選びつつ語る姿は、ラジオや活字とはまた違う味わいがある。ライフワークである子供達との交流を、そして亡き奥様との想い出を語る表情が、言葉にならない程に優しさに溢れていた。
10月にはニューヨークで録った新作が、いよいよ届くとのこと。今年で御年78歳だそうだ。音楽には年齢の壁も国境も無い・・・それをサキソフォン一本で証明しながら、ナベサダのジャズ道はまだまだ続くに違いない。
いちファンとして素敵な音楽に感謝を。
60年に渡り、一つの仕事に邁進し続ける偉大な先達に、男として喝采を贈りたい。
貢子夫人が一緒に出演された時のインタビューです。
Live and Unreleased/Weather Report [JAZZ]
ここんとこ未発表のライブ音源&映像が頻繁にリリースされてる稀代のコンボ、ウェザー・リポート。
全盛期の、ロックバンドも顔負けな凄まじい人気っぷりから推しても、こなしたライブの本数は半端ないだろうし、音源的に宝の山ってところなんじゃないっすかね。
よく「奇跡の音源を倉庫で発見!」みたいな宣伝があるけど、発掘するレコード会社の人も、好きなバンドなら楽しくてしょうがないだろうなって思う。
「うぉおおーこんなところにこんな音源がああああ」・・・みたいな。そうでもない?(笑)
それはともかく、このアルバムは2002年時点での、1975年から1983年までのウェザーの未発表ライブ音源集2枚組み。タイトルもずばり『Live & Unreleased(ライブ&アンリリースド)』。思えばウェザーの未発表をまとめたのはこれが最初じゃないっすかね。出た時はかなり驚いたもんなぁ。
バンドに在籍した四人のベーシストのうち、アルフォンソ・ジョンソン、ジャコ・パストリアス、ヴィクター・ベイリーの時代(アルバム:Tale Spinnin'~Procession)からのライブパフォーマンスをピックアップした18曲。初代ベーシストのミロスラフ・ヴィトウスの演奏が入ってないのが惜しいっちゃあ惜しいんだけど、がらりと音楽性を変えてきたそれ以降を考えると、これはこれで却ってアルバムに統一感が出てるような気はする。ジャコ在籍時代の音源が多めなのは、まぁこれは当然かな。
弾けるようなタテノリを洪水のように繰り出す正攻法ファンクベース・アルフォンソ、予測不能な音使いでサウンド崩壊ギリギリ寸止めの天才ジャコ、ヴィクターとハキムのタイトなグルーヴはむしろザヴィヌルの発想をむしろ最も具現化しているといっていいかも。そんな三人の歴代ベーシストからなる4通りのスーパーリズムセクションを、敢えて年代順に並べるのでなくランダムに収録してあるのが聴き比べとして面白いし、ノリの良さ重視の選曲も楽しくてGOOD。そして何よりもウェイン・ショーターの演奏が聴きモノ。スタジオ盤では明らかにジョー・ザヴィヌルに主導権があって、ショーターは一歩引いている感があるんだけど、ライブではここぞとばかりに本領発揮。周囲に煽られまくってことのほか熱くなってて凄いこと凄いこと。電気楽器(シンセ)を相手に、ミステリアスに唸り時には激しく咆哮するショーターのテナーソロはまさに現代ジャズそのもの。1曲目「Freezing Fire」や6曲目「Cucumber Slumber」での生々しさ熱さといったら、もうこれは熱演というより激演だ。
ウェザー・リポートの場合は、ザヴィヌルとショーターのツートップをとりまくリズム隊(つうかベーシスト)でもってよく語られるわけで、とりわけジャコとアースキン在籍時は、スタジオアルバムの評価もセールス面でも抜きん出てるだけでなく、なんだか「ジャコパスありき」みたいなところが少なくないんだけど、やっぱりウェザーの主役はジョー・ザヴィヌルであり、バンドを頂点に導いたのはウェイン・ショーターの唯一無二なトーンとアドリブのメロディ感覚だってのがホントによく分かるアルバム。強靭な4種類のリズム隊を軸に、マイルスの高弟である沈着冷静なザヴィヌルと荒々しいショーターのバランスが絶妙で素晴らしい。まさにエレガント・ピープル、今さらながらやっぱり凄いバンドだったと再認識。
結成して40年、解散して四半世紀。ザヴィヌルが亡くなって今日でちょうど4年・・・んー、超えられるグループが出てくる気がしないのが正直なところ。
ベスト・トラック
disk2-1 Black Market
disk1-2 Freezing Fire
disk1-7 Teen Town
End of a Summer/Julia Hülsmann Trio [JAZZ]
踏みしめる砂は
まだ少しだけ熱く
おいてきぼりの
サンダルが
夏を惜しんで
泣いている
虫たちは唄う歌を変え
遥か見上げた雲の峰も
今は もう無い
時の訪れは従順で
だけど
何も告げずに
とおり過ぎたりもする
ベスト・トラック
3. Kiss From A Rose
4. Last One Out
10. Where In The World
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
BOX SETの愉しみ ~ Miles Davis [JAZZ]
僕が最初に手に入れたMiles Davisのアルバムってぇと。レコードの方は『クッキン』。中古で1500円くらいだったかな。CDは『アガルタ』・・・こちらは4000円だったかな。その頃CDって安くなかった。ここ最近はインポートのCDなら新品でも一枚1000円前後で買えちゃったりするもんな。ありがたいこってす。
マイルスのボックスセットって、ん万円もするような豪華なのから廉価なのまでホントにごろごろ出てるんだけど、価格的には今のところこれが極めつけじゃないっすかね。
Disc 1: Birth of the Cool & Dig.
Disc 2: Dig pt 2 & Blue Haze.
Disc 3: Walkin' & Musing of Miles.
Disc 4: Blue Moods & Miles Davis Quintet/Sextet.
Disc 5: Miles/ Miles Davis with Horns.
Disc 6: Relaxin' & Bag's Groove.
Disc 7: 'Round About Midnight & Miles Ahead.
Disc 8: Cookin' & Milestones.
Disc 9: Miles Davis and the Modern Jazz Giants & Somethin' Else
Disc10: 1958 miles & Porgy and Bess.
※Porgy & Bessのみ、1曲カットされてます。
1950年の『クールの誕生』から1958年の『ポギーとべス』まで、主にPrestige~CBSの1950年代の作品群からのチョイス。かの有名なマラソンセッション4部作が揃ってなかったり『Somethin'Else』が入ってたり(いちおうマイルス名義ではないという意味で)と、突っ込み所も有るにはあるが、ここまで激安にされると笑って許しちゃう。つうか年代順に収録されてるってのはかなりポイント高い。あまねく知られた名盤中の名盤も何枚か入ってるんだけど、案外持ってないアルバムがかなり有ったりするんだよこれがまた。マイルスのコンプなんて考えたことも無いもんでさ(笑)。
んー、こうなると60年代版もこの価格で企画して欲しいっすね。