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Morning Island/渡辺貞夫 [FUSION]

今日も大阪はじめじめした梅雨空でございました。
渡辺貞夫の『モーニングアイランド』で爽やかにいきましょう。

morningisland.jpg


おそらくだけど、古くからのフュージョンファンでこのアルバムを聴いたことがないって人はいないんじゃないかな。
『マイ・ディア・ライフ』から『カリフォルニア・シャワー』と続いたビクターFLYING DISKレーベルでのナベサダのフュージョン三部作のラストを飾る名盤。
カリプソ風のリズムに涼しげなフルートが乗る表題曲『Mornign Island』は、まだひと気のない摩天楼の夜明けの風を思わせ、続く『Down East』では弱冠23歳のテクニシャン、のフランシスコ・センテーノの強烈なベースラインが炸裂する。高らかなソプラニーノはサブウェイから地上に出て見上げる朝の眩しい日差しのようだ。『三月のサンバ』と題されたグルーシン作の『Samba Do Marcos』にはアフターファイブを満喫するニューヨーカーたちの賑わいを感じる。

操上和美の撮影によるこのジャケット写真、あまりに出来が素晴らしかったためにジャケット内に文字を入れる場所が無くなってしまったんだって。今も昔も本当に良い笑顔するよねナベサダは。
マンハッタンの摩天楼を背にしたナベサダの満面の笑みには、本場の強者たちとのレコーディングを終えて、前作『カリフォルニア・シャワー』で得たコンテンポラリーな路線を完成させた手応えと充実感に溢れているようにも見える。

もちろん素晴らしいのはジャケットだけではない。
S.ガッド、J.ミノロフ、R.ティー、E.ゲイルら錚々たるミュージシャンが奏でるベーシック・トラックは一聴すると細部まで譜面化されたアレンジのようにも聴こえるが、ベーシック・トラックはメロディとコードネームと大まかな「行き方」のみ。それにグルーシンの手によるゴージャスなブラスやストリングスを被せて、晴れ渡ったマンハッタン島の一日を思い起こさせるタイトで爽やかな作品に仕上がっている。ガッドの叩き出すリズムは言わずもがな、ミノロフのカッティング、センテーノのベースもゴキゲンだね。エリック・ゲイルのソロなんかは前の日に泥棒に入られた男の演奏とは思えないかっこよさだ(本当)。
アルバムを通してアドリブよりもテーマのミスに妥協せず徹底的に主題に拘った、およそジャズ的ではないレコーディングによって『モーニング・アイランド』は、今も多くのファンに愛され続ける日本屈指のフュージョンアルバムとなった。夏をターゲットにしたアルバムが出ては消え出ては消えて行った中で、我ら日本人のリーダーアルバムが世界トップレベルの完成度を誇っているのは、ただただ凄いと思う。

限られた一部のジャズファンに対してだけでなく、より多くの人々と『音楽の楽しみ共有する』という、今も変わらない「ナベサダ流のジャズ」が1979年に結実し今年で30回目の夏を迎える。
全く古さを感じさせない世界水準のクオリティと、ジャケットに映るナベサダの日本一の笑い皺。。。
今年の夏は、何人の音楽ファンの部屋に爽やかな涼風を吹かせるのだろうか。
このアルバムの凄さは、そこんとこに尽きる。

2.Down East
1.Mornign Island
7.Samba Do Marcos






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kazn

古く「は」フュージン・ファンです。
曲と一緒にあの頃が甦ります。
by kazn (2009-07-22 21:00) 

ゆっぴー

「限られた一部のジャズファンに対してだけでなく」
ってのが嬉しいなぁ~~~!

このアルバムが再販されるときのライナーノートをなちゃさんが書いたら売れると思うんですが!?
先日から落ち込んでいたので、嬉しいです!!ありがとう!!!

by ゆっぴー (2009-07-22 21:25) 

mwainfo

ナベサダさんのお兄さんはドラマーです。時々ライブを聴きます。余興で、
チェットベーカーばりの歌を披露します。
by mwainfo (2009-07-23 10:17) 

土佐のオヤジ

このアルバムは名盤ですね~。
僕がナベサダを初めて聴いたアルバムです。
高校生の頃ですね。
ジャケット眺めて、ニューヨークに憧れたものです。
いや~~~、懐かしい!
by 土佐のオヤジ (2009-07-23 11:07) 

なちゃ

kaznさん、こんにちは。
おかえりなさい。旅はいかがでしたか?
1980年前後のフュージョンって爽やかでいいですねぇ。
by なちゃ (2009-07-23 18:24) 

なちゃ

ゆっぴーさん、こんにちは。
いやいや、それは褒め過ぎですって^^
でもこれ、ジャケットも含めていいアルバムですよね。
この後の武道館といい、貞夫さんのキャリアで大きな意味を持った時期でしたね。
9月の新譜も楽しみです^^

by なちゃ (2009-07-23 18:25) 

なちゃ

mwainfoさん、こんにちは。
渡辺文男さん、歌も唄われるんですね。
ライブは聴いたことありませんが、ご兄弟で日本のトップジャズマンだなんて、すごいです。
by なちゃ (2009-07-23 18:26) 

なちゃ

土佐のオヤジさん、こんにちは。
名盤ですよね~。シンセを殆ど使ってないのもあって、逆に劣化しないというか・・・

79年といえば日本でもカシオペアやスクェアもデビューしていて人気でしたが、まだまだ格が違うって感じがします。

by なちゃ (2009-07-23 18:27) 

空兵ーS

モーニングアイランド
フュージョンと言う名も知らずに聞いていました。
一度聞いたら忘れられない
軽快でのりのいい曲ですね。
by 空兵ーS (2009-07-24 23:37) 

なちゃ

空兵ーSさん、ありがとうございます。
フュージョンが大流行してましたが、ナベサダ自身はあくまでもジャズとして取り組んでいたと、僕は思ってるんです。
たぶんこのアルバムは10年後も聴き続けてると思います。
by なちゃ (2009-07-26 00:04) 

なちゃ

niceを下さった皆様、ありがとうございます。
by なちゃ (2009-07-26 00:05) 

sak

渡辺貞夫さん、大好きです♪
気持ちのいい青空に優しい笑顔
素敵なジャケットですね
by sak (2009-07-26 11:22) 

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