汎音楽論集/高柳昌行 [Book]
図書館で鎮座していらしたので借りて帰って読んでみた。
ジャズギタリストであり、日本のフリー・インプロビゼーションの権威でもある高柳昌行(~1991)の生前の文業を年代順にまとめたもので、その名も『汎音楽論集』
漆黒に文字だけという重々しいカバーからして『一筋縄ではいかない感』が漂ってるし、タイトルからも軽く読んで良い娯楽書の類ではないってのは一目でわかる。装丁のとおり内容は重く、僕は読むのに根気を要した。
SJ誌やジャズ批評、ジャズライフをはじめとした国内の音楽雑誌へのコラムとインタビュー、ディスクレビューなどが年代順に読める編集となっている。
終始にわたって、音楽を生業とする者(ミュージシャン)としての厳しい姿勢を貫き、聴く者(リスナー)も同レベルでそれに対峙しなければならないと説く。一貫してぶれのない文章には一介の素人が反論できる余地など皆無と言って良い。コラムは年代を追うごとに(特に商業音楽に対して)批判精神の塊と化し、綺麗とは言い難い形容を用いながら辛辣さ(良く言えば歯に衣を着せぬだが)を増してゆく。数多のジャズマンや評論家(マスコミ)だけでなく、我々リスナーにも容赦なく向けられたコトバの刃が突き刺さってくるようで、正直、ついて行けない箇所も少なくなかった(ディスクレビューは面白かったけど)。
これはおそらく…いや、絶対に僕のような器の小さなユルい音楽好きが手にしてはいけない書物のひとつなんだと思ったな。『高柳は自ら見出した音のなか、音で生きたのではなく、音に生きた。』・・・・道子夫人によるあとがきにもあるとおり、恐るべき”音楽表現”への執念だ。
クラシカルのごとく居丈高に権威の衣をまとい、古色蒼然たる甲冑に身を固めながら、古城に彷徨う亡霊さながら、近代建築のホールを巡り、コンテンポラリーとなると真新しい装いで時間の流れに乗りつぎ、見せかけの巧みな技を以ってその「音楽」と信じ込んだものを極めようとするもの。又、反面、旧ジャズやソウルのごとく前者と全く無縁な所で、地を這う生活の中に呪詛の如く発生したもの、フォークやロック、はたまたニュー・ウェイヴとやらただ惰眠を貧る痴呆のたわ言をそのまま羅列したものに一定のリズムをつけたに過ぎぬもの(セリエルもその一種か)等々。分類して見るまでもないが、これらが各々取巻きを組織し、仲間褒めに終始する、その上、なおこの各形態を商品化し、その利を得ようとする人種が「業者」であり、群なして煽り立てるのがマスコミとジャーナリスト、とりわけ「音楽評判家」という化物である。(抜粋)
本書の目線では、僕はまだまだ聴衆として赤子同然に未熟で低次元なようだ。しかしながら、ジャズの名の下で即興の極みを目指し、到達するとこうなるのかと思うと、それはそれで少し恐ろしい気もする。万人を励まし笑顔で満たし、時には飢えや天災に苦しむ人々に、世界中の幾許かの良心を届けることが出来るsong・・・それらをも否定することが誰に出来ようか。僕には出来ない。。
一切の所謂エンターテイメント性を排除した音こそが『芸術』であるのなら、僕は音楽が大嫌いになっていたに違いない。
もしも僕の中で『音楽は音学ではなく音楽でしかない』という考えが変わる日が来たなら、本書に再挑戦するかもしれないが・・・でもおそらくそんな日は来ないだろうな。
そして僕は思う、果たしてこれが音楽なのだろうかと・・・・残念ながら、まだ僕にはわからない。
たかが音楽されど音楽・・・・たぶん僕には、そのくらいが丁度良い。
結構厳しい内容のようですね。(^_^;)
by nyankome (2010-02-20 00:43)
所謂……○○論とは……その方自身の課題なワケで……若い頃、芝居
論、演劇論、演技論……いろんな方に上から押しつけられたものです
が……今は「豚の屁」な感じですかねえ……失礼しました!
by 漢 (2010-02-20 11:20)
なんのかのと言っても
良い音楽というか、優れた音楽は
人々に語り継がれて、愛されて
残っていくものだと思います。
それ以外に何が必要かなと思います。
by 空兵ーS (2010-02-20 20:44)
聞いてみたら…朝から頭痛がしていたのがちょっと増したみたいです…- -;
by chako (2010-02-21 11:04)
カメラが来たら写真をアップしますので
訪問お願いしますね(^0^)
by ひろちゃん (2010-02-21 16:26)
学問と思ったことがないので、楽しめればいいです。
by kazn (2010-02-21 18:31)
nyankomeさん、こんばんは。
はい、かなり難しい内容でした。濃い内容なので、読んでみる価値はあると思います^^
by なちゃ (2010-02-23 01:24)
漢さん、こんばんは、
その方の課題・・・そのとおりだと思います。豚の屁ですか、漢さんさすがです^^
by なちゃ (2010-02-23 01:25)
空兵ーSさん、こんばんは。
スタジアムを笑顔で満たすロック、半世紀も愛されてるジャズ、クラシックは何百年も世紀を越えて愛され続けてますもんね。
理論や理屈じゃない何かがあるとしか言えませんよね^^
by なちゃ (2010-02-23 01:27)
chakoさん、こんばんは。
氏は日本を代表する素晴らしいジャズギタリストでもあります。
でも、これは・・・正直きついですよね・・・
by なちゃ (2010-02-23 01:28)
ひろちゃんさん、こんばんは。
お花や鳥やワンちゃんのお写真、楽しみにしてますよ^^
by なちゃ (2010-02-23 01:28)
kaznさん、こんばんは。
音楽に学問や芸術として対峙すると、疲れちゃいますよね。
かなり厳しい内容の本でした。
by なちゃ (2010-02-23 01:28)
niceを下さった皆様、ありがとうございます
by なちゃ (2010-02-23 01:29)