大阪フェスティバルホールの想い出 [myblog]
初めて行ったライブやコンサートの感激を覚えていますか?
先日、車で大阪中ノ島近辺を通過した時に、大阪フェスティバルホールの、ビル改築に伴う閉鎖のニュースを思い出した。
そういえば、しばらく行ってないな…今年いっぱいで一旦閉鎖になるのかー。
もう、あのホールでライブを聴くことはないんだな…
「ここを壊すのはカーネギーホールやオペラ座を壊すのと同じこと。愚行です」(山下達郎)
大阪フェスティバルホールの音響の良さは有名だ。
それほど耳が肥えていない僕にはあまり判らないが、確かにこのホールで音響的に不快だった経験は無い。個人的には、斜面が急でステージが見やすい客席は大阪城ホールと違って大好きだったし、このブログでこれまで書かせて頂いたミュージシャンの勇姿の多くは、フェスティバルホールのシートで経験したものだ。
どこのコンサートホールよりも一番多く足を運んだ場所ということもあって、今のフェスティバルホールが無くなってしまうのは感慨深く、やっぱり少し残念な気もする。
そういえば、ディープ・パープルの『ライブ・イン・ジャパン』やマイルスの『アガルタ』と『パンゲア』もここでの録音なんですよね。
そして、なんと言ってもフェスティバルホールは、僕がライブ童貞を捨てた思い出の場所でもあるのだ。
今ではライブという呼び方の方が市民権を得ているが、僕が高校生の頃(26年前!)はコンサートという言い方の方が一般的だった気がする。それはともかく、僕のライブ初体験は渡辺貞夫だった。 アルバム『FILL
UP THE
NIGHT』のツアーでの大阪公演だ。
チケットの発売が、高校生になりたての春だったので、一緒に行く友人も見つからずに、僕は一人で行くことにした。
初めてのコンサート、初めてのナベサダ、初めてのスティーヴ・ガッド、初めてのエリック・ゲイル…キーボードのリチャード・ティーが、来日出来なかったことを差し引いても、メンバーはもの凄い顔ぶれだった。
僕の座席は、前から20列目くらいの真ん中あたりで、ステージを見下ろすと、淡い照明に照らされたエリック・ゲイルのフルアコ、ウィル・リーのジャズベース、そしてスティーヴガッドの黒いドラムセットが、ほんのりと輝きながら、主がステージに上がって来るのを静かに待っていた。キレイだな。。。
少しすると客席の左右の隣りには、僕よりもずっと年上の男性が座った。どちらも、もの凄く紳士に見えた。客席が次々と埋まっていく。どきどき…どきどき…
軽くアナウンスが入り開演を告げると、スッとステージが照らされ、逆に客席の照明が落ちる。ウワァーっと 湧き上がる歓声。両手にアルトとソプラニーノを持った笑顔のナベサダを先頭に、憧れのミュージシャンたちが次々と現れ、持ち場についていく。 割れんばか りの拍手、拍手、拍手…それが静まったのを合図に、スティーヴ・ガッドがスティックでカウントを鳴らし、ラルフ・マクドナルドのコンガが軽やかにリズムを刻み始めた…
す、スゲェ…僕は本当にここにいるんだ。。。
このライブに限って言うと、僕は一人で行って良かったと今でも思う。なにせ僕は、まだ演奏も始まってないのに、ミュージシャンが登場しただけで、あっけなく落涙してしまったからだ。
演奏の内容は、実はよく覚えていない。口をポカンと開けて、座席に浅く座り、上半身を乗り出すように目を皿にして耳をダンボにして演奏に熱中し、生きたバンドの音にただ圧倒された。
楽曲中でのソロの終わりには拍手を入れるというのも、この初のコンサートで知ったし、フュージョンを含むジャズという音楽では、ミュージシャンのソロがとて も大きな意味を持つというのをなんとなく覚えて、ジャズファンのひとりになれたような気がして嬉しかった。聴き込んだレコードとは全く違うフレーズで熱く 演奏される長尺なソロに『これがアドリブというやつか!プロは楽譜も無しに、こんな風に吹けるのか!』と衝撃を受け、そして陶酔した僕は、まるで猿のように力一杯に拍手した。ソロの合間も曲が終わった時も。隣りの男性はアホちゃうか?このガキ…と思ったかもしれない。
だからやっぱり一人で行ってよかった(笑)。
終演後の帰路のことは全然覚えていない。
高校生だったから、ライブの余韻に浸りながら痛飲してしまった筈はないのだが、電車に乗ったことも駅からバスに乗ったことも記憶にないんだ。
ただ、ホールを出ると、掌が少し腫れてヒリヒリと痛かったのと、何故か自分の楽器に触れたくなって、大阪駅までとても早足だったのは覚えている。
きっと、どんな酒より素晴らしい音楽の酔いが全身にまわって酔っぱらっていたのだろう。
僕はその日、大阪フェスティバルホールで晴れてライブ童貞を捨てた(笑)。 今思えば、その日の感激は『初めてのチュ-』や『初めてのC』なんて比較にならないくらいに、大きなものだった。
大阪が誇るコンサート・ホールである大阪フェスティバルホール。
一時的な閉鎖は時代の流れであるから仕方がないですね。だからこそ、関西の多くの音楽ファンの思い出と、半世紀にわたる過去の名演奏を汚さぬ最高のクオリティでの復活を願ってやまない。
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