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WELCOME/松岡直也 [FUSION]

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不覚にも長時間の残業という事態に巻き込まれた時、帰宅までの空腹を凌ぐにはあんパンがよろしい。
職場ビル内のサロンにパンの自販機があって、夕方になるとこれから残業に入る人たちが次々とパンを買って行く。自販機にあんパンのある日は幸せで、売り切れてしまった日は不幸せなのだ。あんパンは急いでいても3分もあれば食べ終われるので都合が良いし、しかも安くて旨い。牛乳と組み合わせれば無敵といっていい。ただし僕の場合は粒あんに限るが(笑)。
Wikipediaによると、明治時代に日本人の口に合うように発明された日本独自のパンで、つぶあん、こしあん、まれに白あんやうぐいすあんのものがある。外国から輸入した文化を日本向けに改良した物の例として挙げられる事がしばしばある。最も典型的な形状は、平たく、円盤のようなもの。(中略)木村屋(現・木村屋總本店)創業者であり茨城県出身の元士族・木村安兵衛とその次男の木村英三郎が考案し、1874年に銀座の店で売り出したところ好評を博したとされる。翌年、山岡鉄舟を通して明治天皇にも献上された。とある。
文明開化の中、続々と海を渡ってやってきた西洋食物の代表であるパンではあるが、あんパンは純然たる日本製のパンであり、明治天皇に献上された日にちなんで四月四日はあんパンの日とされているほどだ。カロリーは約300kcalなので、Mドナルドのチーズバーガーが一個分くらいか。
そもそも、西洋人から見て主食に相当する『豆』に砂糖を加えて甘く煮込んだ餡(あん)は、食品として『ありえない』ものらしい。その餡を、西洋食物の代表格であるパンの中に閉じ込めて焼いてしまったあんパンは、日本初の、そして究極の和洋折衷ともいえる。日本人にしか出来ない素晴らしい発明品なのですよ、あんパンは。

松岡直也の『Welcome』。1983年のモントルー・ジャズフェスティバルなどの演奏を収めた2枚組みのライブ盤である。リイシュー盤にしては価格がやけに高いのに反発して買わないでいたが、結局折れて買ってしまった(笑)。それにしても、こういった過去の良い作品は、もうひと声安く再発して欲しいものだ。新譜ではないのだから、いくら2枚組とはいえ、高すぎる。
松岡直也の音楽のベースとなっているラテン音楽は中南米が発祥で、ラテン語圏のヨーロッパ諸国のポピュラー音楽を指す場合もあるし、ニューヨークあたりもひとつの本場と言われていて幅広い解釈があるようだが、いずれにせよ輸入されたものであって日本が生んだ音楽ではない。松岡直也のサウンドの魅力は、リズムは本格的なラテンでありながら、それに乗っかるちょっとチープな音色のシンセで奏でるいかにも日本人好みの甘いメロディや、ディストーションを効かせた浪速節ともいえるようなギターで聴かせる『ワビサビ』。それに加えて1980年代当時、全盛を極めていた『あの時代のフュージョンの音』を上手くブレンドした、日本人だからこそ成し得た『日の丸ラテンフュージョン』のサウンドだ。純ラテンの音楽から見て本物であろうと無かろうと、年月を経ても文句なくただ楽しく聴ける本作『Welcome』は、熱いラテンのリズムというパン生地に、胸がキュンとなるような甘い哀愁を閉じ込めて、香り高く焼き上がったあんパンのようだ。

ベストトラック
disc2-4. TOUCH THE NEW YORK PINK
disk1-1. THE MAGICIAN(Open Sesame!)
disk2-2. SUNSPOT DANCE


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コメント 2

hankyu8200

うまい!!(^-^)/
by hankyu8200 (2009-03-03 13:57) 

なちゃ

hankyu8200さん、ありがとうございます。
またゆっくりお邪魔いたします。
by なちゃ (2009-03-03 19:45) 

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