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楽器を破壊する男たち [myblog]

ライブでの演奏中に楽器を破壊して見せるミュージシャンがいる。僕はあれが大嫌いだ。
理由のひとつは単純だ。楽器は高価なもので使い捨てではない。
勿 体 な い だ ろ そ れ

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理由のもうひとつは楽器に対する愛情だ。

楽 器 が 可 哀 想 だ ろ そ れ[パンチ]


プロミュージシャンがステージに連れて行く楽器は、その感性に最も呼応する選び抜かれた商売道具であるべきで、身体の一部といっても過言ではないと僕は思うのだ。それをズタズタに破壊するという行為は、ミュージシャンにとっては耳の穴から指突っ込んで奥歯ガタガタいわされるくらいの痛みが伴うものではないのか。

そもそもミュージシャンなんて楽器なしにステージに上がっても何も出来やしない。話芸に長けたミュージシャンもいるにはいるが、トークだけでは聴衆は納得しないだろうし、かといって腕立て伏せやスクワットや手品や大食いなどの隠し芸を披露してもドンビキを喰らうのが関の山だ。聴衆はお目当てのミュージシャンが華麗に楽器を奏でる勇姿と音楽を体感しに来ているのだから。
僕に言わせれば、楽器という相方がいるからこそヒーローで居られるのに、楽器を踏ん付けたり投げつけたりなぞ勘違いや思い上がりにも程がある。料理人は包丁を大切にするし、カメラマンだってそうだ。バイク乗りは命を守ってくれるヘルメットを無闇に投げつけたりしないし、漁師は船の甲板を磨きエンジンの手入れを怠らない。

たとえば『アンチテーゼとしてのロック』を表現する上での必然性や、演奏中に感極まってトランス状態となった『衝動的な破壊』も中にはあるのだと聞く。だからといって、さっきまで仲良くステージを共にしていた主が突如豹変し、地面に叩き付けられへし折られる楽器の断末魔の声が果たして『音楽』といえるのか?ロックが攻撃的な音楽だってことを差し引いても『それは違うだろ』と。それをあたかも表現や演奏のテクニックの一部であるかのように正当化するのが疑問で仕方が無い。
名もない安物だろうがビンテージ物だろうが、力任せに楽器をただぶち壊すことなんて僕にだって出来るのだ。

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おそらくジミヘンザ・フーあたりが起源であるこの愚行を何の信念もなく模倣するミュージシャンが現れ、あろうことか楽器の作り手であるメーカーまでもが賛同しているように見える。
楽器を壊すパフォーマンスで有名なあるミュージシャンは、契約メーカーにわざわざ『破壊用の楽器』を用意させて予め決められた曲の中で壊すのだそうだ。こうなるともはやトランス状態も衝動もへったくれもない。舞台裏でリベートを受け取ってニヤニヤしている表情までもが下衆の勘ぐりとして脳裏にちらつき、滑稽で薄ら寒さしか感じることが出来ない。キレた子供のような暴れっぷりを見ていると、ステージで目立つ自分が大好きなだけで、音楽にも楽器にも愛着がない人にしか見えなくなってくる。楽屋で背中を丸めて、楽器に飛んだ汗を拭い、大切に磨いている姿の見る方がよっぽど絵になってカッコいいし説得力がある。

世界に名を馳せるどんなスーパースターでも、生まれて初めて楽器を手に入れて鳴らしたのはライブハウスでもスタジアムでもなく、誰も知らない世界の隅っこだったはずだ。
その時の気持ちを思い出してみろ、と言いたくなる。






 

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nexus_6

...でも、キース・エマーソンがハモンドL100を引きずり回したり鞍馬に使ったり、下敷きになって逆側からトッカータを弾くのは嫌いではなかったです。^^;
衝動ではなく計算し尽くしたパフォーマンスだったそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/キース・エマーソン

キース・エマーソンを敬愛する小室哲哉もステージで楽器を壊しまくるパフォーマンスをしたことがありますが、よく観ると全て破壊用のダミーでした。さすがに本物を壊すのは抵抗があったようですね。
by nexus_6 (2009-07-26 09:57) 

sak

バンドやっていた頃
壊せるくらいお金があればなぁ...って
今思うとほんとにもったいないですね
by sak (2009-07-26 12:34) 

空兵ーS

パフォーマンスなんでしょうが私も物を壊すのはあまり好きじゃないですね。
ましてや楽器をね。
私自身はそれほどでもないのですが、
自分の愛用の物、道具などを大事にする人、
好きですね。
そういう人は、きっとよい仕事をされる気がします。
by 空兵ーS (2009-07-26 20:41) 

なちゃ

nexus_6さん、こんばんは。
wiki読みました~。ナイフや日本刀の話は有名ですが、そんなに暴れん坊だったのは知りませんでしたよ。
爆音を鳴らすためとか、すごいこと書いてありますね。
壊さずに別の方法を考えろって僕の発想は、やっぱりロック向きじゃないのかな(笑)
by なちゃ (2009-07-27 23:54) 

なちゃ

sakさん、こんばんは。
壊すのって、どんな気分なんでしょうね。
壊すならギブミープリーズですよね(笑)
by なちゃ (2009-07-27 23:58) 

なちゃ

空兵ーSさん、こんばんは。
殆んどがショーアップのためなんでしょうね。
それでも楽器を壊す必然性が理解できません・・・そんなに暴れたいなら巨大な『おきあがりこぼし』でもおいとけよと・・・それじゃ絵にならないか(笑)
『口を動かす前に手を動かせ』って言葉がありますが、『暴れる前に指動かせ』って感じですかね。とにかく勿体無いし楽器が気の毒です。
by なちゃ (2009-07-28 00:08) 

なちゃ

niceを下さった皆様、ありがとうございます。
by なちゃ (2009-07-28 00:08) 

える

同感です。
私、以前 バンド活動をやっていた事がありましたが、
音が合った時の快感って、これまでに無かった、まるでエクスタシー!
あれは、言葉では表現出来ない 大きな感動です。
しかし、楽器を壊そうだなどとは思った事、ないです。
幼稚園の頃、教わったお歌を 帰宅後、オルガンで弾いて歌っていた事を思うと、
楽器はお友達でしたから・・・・・・・・

by える (2009-07-28 00:58) 

なちゃ

えるさん、こんばんは。
えるさんもバンドされてたんですね^^
どんなに練習を重ねて上手くいかない時でも、楽器に罪はないんですよね。
楽器を思い通りに操れるプロミュージシャンが、だからといって楽器を裏切るような真似をしてはいけないと思うんです。
自分の才能を開花させた楽器に敬意を払う方が、芸術家として立派だと思うんですよね・・・・
by なちゃ (2009-07-28 22:50) 

nano

壊すのはもってのほかですが
集めるだけのコレクターも些か疑問があります
(勿論、さわってるとかたまに弾くのはいいんですけどね)
by nano (2009-07-29 23:12) 

なちゃ

nanoさん、こんばんは。
たしかにそうですね・・・・まったく鳴らされることのない楽器というのも変だし可哀想な気がしますね。
by なちゃ (2009-08-02 22:04) 

chako

例えダミーでも、楽器を壊すのはバカだと思います。不快!です。
そんな人、音楽する値打ちもありませんよね。質草にする人も、彼女を遊郭に売り飛ばすみていで…
by chako (2009-08-04 11:31) 

なちゃ

chakoさん、こんばんは。
壊れた楽器はおそらく、もう音を出すことは出来ないのでしょうね。
間違いでも楽器を壊してしまったミュージシャンは凹んで凹んで凹みまくるべきだと思います。
by なちゃ (2009-08-04 23:44) 

丹下段平

クラッシュの『ロンドン・コーリング』のジャケットを見る度に「かっこいい」と思えてしまいます。あれくらい壊し方が決まってくれるといいかなと思えてしまいます。単なるパフォーマンスなら止めてほしいですね。
by 丹下段平 (2009-08-05 01:57) 

なちゃ

丹下段平さん、こんばんは。
『ロンドン・コーリング』、衝撃的なジャケットですね。
衝動による破壊の瞬間を捉えたのであれば、写真的には見事なジャケットと思います。でも・・・聴いたことないんです、すみません(笑)
by なちゃ (2009-08-11 21:14) 

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