さわやかな風～高橋尚子 引退

 

 

今は、過ぎ去った台風の後のさわやかな風が吹いている、というのが心境です。

2000年、シドにーに吹いた風を僕は今でもよく覚えている。
レース後半、サングラスを投げ捨てて駆けた鮮やかなスパート、金メダルと五輪最高記録、それまでの厳しい表情から一転したけろりとした笑顔。。。苦悶の表情でゴールと同時に倒れ込むのが、僕の女子マラソンのイメージだったのだが、高橋尚子は全く違っていた。
と　っ　て　も　楽　し　い　4　2　キ　ロ　で　し　た　
…五輪史上で最も過酷だと言われたコースをトップで走り切り、さらりと笑顔で言ってのけたゴール後のコメントには参った(笑)
女子陸上競技での初の金メダルを日本にもたらした堂々とした走りは、彼女が引退会見で使った言葉どおり、爽やかな風のようだった。

それから僕はＱちゃんが大好きになった。
日頃マラソンはあまり観ないが、彼女のレースだけは観た。細身な身体でキッと胸を張って走り続ける姿と、そして何よりも屈託のない前向きな気持ちに、いつも元気をわけてもらうような気がしたんだ。
ベルリンでの世界記録(当時)、東京国際で独走したレースとまさかの失速、そして名古屋国際での惨敗。。。
勝った時も負けた時も、五輪への夢敗れた時も…いつも気丈にＱちゃんスマイルを見せてきた彼女が最後の最後に涙を堪え切れず泣いていた。

完全燃焼だと本人が語っていたのだから、きっとそうなのだろう。でも本当は走りたいのだろうな…とも思う。
プロの名を捨てて様々な責任や苦悩から開放された今後は、ひとりの市民ランナーとして大好きなマラソンを心ゆくまで楽しんでもらいたい。そうすれば、あの素敵な笑顔が曇ることは、もうないのだろう。
Ｑちゃん、夢と感動をありがとう。お疲れ様でした。

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