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2.0/L'image [FUSION]

魚釣り、グルメ、日曜大工、自動車、コスプレなどなど…古今東西、趣味にも色々とあるが、幻の・・・という言葉は、その趣味に深入りすればするほど、なんとも言えない魅力的な響きをもつ。
幻の大魚、幻のカレー、幻の鋸、幻のスーパーカー、幻のナース服。。。ん?ちょっとちがうか(笑)
昨今はパソコンが趣味って人も多いんだろうけど、『幻のCPU』とか『幻のマザーボード』ってのも有るかもしれないね。僕は聞いたことないけども(笑)

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『音楽を聴く』とか『盤をコレクションする』という趣味の中にも『幻の名盤』ってのがあって、モノによってはマニアの間で凄い金額で取引されている盤があったりする。しかし、このアルバムの主はグループそのものが幻の立場にあらせられたんだって。
フュージョンの源流のひとつと言われる、これまた伝説のセッション『ホワイトエレファント』から六本木を沸かせた『ステップス』に至るまでの1970年代の一時期、マイニエリを中心に、S.ガッド、D.スピノザ、T.レヴィン、W.バーンハートが集ってライブ活動をしていたらしいのだが、なにせ当時はフュージョンブームの真っ只中。メンバーが多忙を極めていく中で、公式な音源を残すことなく自然消滅してしまった………のだそうだ。だからマボロシ。ふーん、これは知らなかったなぁ。
本作『2.0』は、そんな幻のフュージョングループ『リマージュ』から突然届けられた再結成レコーディング。1stアルバムということになる・・・のでしょうかね。
僕はW.バーンハートって人ははあまり知らなかったのだけど、ベースのT.レヴィン、ギターのD.スピノザって、こりゃ確かに渋いメンバーだし、マイニエリとガッドの顔合わせと来ればマイニエリのリーダー作『ラヴ・プレイ』や深町純の『N.Y.オールスターズライブ』、ジャズ方面でもステップスの『スモーキン・イン・ザ・ピット』なんて凄いアルバムが有るからして、こりゃフュージョンファンの端くれとしては興味津々で聴いてみたくなりますわな。しかも幻のバンドなんて言われちゃうとね(笑)。

Mike Mainieri(vib),
Warren Bernhardt(key),
David Spinozza(g),
Tony Levin(b, chapman stick),
Steve Gadd(ds)


このアルバムの価値は、倉庫に眠っていた30年前の音源をリマスターして出したというのではなく、あくまでも今の演奏だという所に有ると思う。
あの黒いスティックでの鬼気迫るようなドラミングで、音楽ファンを魅了したS.ガッドは、ここではブラシを主に使っている。
無駄な装飾を削ぎ落した極上のグルーヴに包まれた、フワフワと舞い上がるようなヴィブラフォン、しなやかに丁寧に音を紡ぎ出すギター。そして何よりW.バーンハートのピアノがいいわ。優しくてたまらん。
30年の時を超えて幻の世界からこの地上に蘇った音は、熟練のリズムとメロディが淀みなく流れる拍子抜けするほど地味でシンプルなもの。しかし、珠玉の9曲から漂うストイックとも思えるこの深遠な美しさは、長年の雨風に耐えて来た互いを称え合う達観のようなものと、森の中です~っと深呼吸しているような優しさと清々しさに満ち溢れている。
それぞれが還暦を越え、大きな大きな音楽界の大樹となった今もなお年輪を重ね続け、美しく熟成したフュージョンを奏でてくれる偉大なミュージシャンたちの対話。聴きながら湧き上がるのは、感動というよりも感謝に近い心境。
僕はこの気持ちを、これからも続くであろう音楽という趣味の傍らに『リマージュ2.0』を、ずっとずっと置き続けることで表したい。聴けば聴くほど味が出てきそうだ。

ベストトラック
1.Praise For All That Is
9.Love Play/ Comin' Home
10.L'Image (bonus track)

(ファイルサイズの関係で音質を下げて、F.O.させています)


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DISCOVERIES/T-SQUARE [FUSION]

勇気が出ます!
愛があります!
元気になります!

愛と勇気のポップ・インストゥルメント・バンド


……いったい誰が考えたんでしょうか(笑)。読んでいるこちらが恥ずかしくなってくるタスキの宣伝文句でありますが、今年もこの季節がやって来たぞ~。
なんと通算35枚目のオリジナルアルバムでございます。もう35枚もアルバム出してんだね。あとベスト盤とかライブアルバムとか企画モノとかを合わせると50枚くらいになるのかな。凄いね~。

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出会ったのが高校一年生の時だから、もうかれこれ27年。若い頃は新譜の発売日には速攻でCDショップに走ったもんだ。今はそれほどではないにしても、ずっとバンドでも色んな曲を演奏したし、ベスト盤以外のアルバムは全て買い続けてるわけで『長年お世話になっております』って感じかな。こりゃもう半ば腐れ縁みたいなものかもね(笑)。まぁ歳くって長く音楽聴いてると、そんなミュージシャンやグループのひとつやふたつやみっつくらい有ってもいいわな。
『愛と勇気のポップ・インストゥルメント・バンド』、T-SQUAREは、僕にとってそんなバンド。。。実はポップ・インストゥルメンタルだったんだ。フュージョンじゃなかったのね。

昨年の活動は30周年記念イヤーだということで、アルバムとツアーが9人編成、夏の野外イベント『野音であそぶ』は総勢15人というびっくり編成だったんだけど、前作の『WonderfulDays』は、旧メンバーを交えての企画モノの一面もありながら大真面目に全曲が新曲という聴き応えのある楽しいアルバムだったし、一昨年のアルバム『33(サーティースリー)』も個人的にはかなりの快作だった。
それだけに、現在の正式メンバー4人に戻ったら、少なくとも去年の野音みたいな同窓会気分丸出しの緩さは無いはず…て期待してるんだから結局はスクェアが好きなんだな。
さてさて、どうでしょうか。

収録は9曲でスクエアのアルバムらしくコンパクトな作り。だらだらと駄曲を700MB・80分詰め込むよりは、この方がよっぽど集中できる。壮大なイントロから疾走感が心地よい曲、安藤正容のギターがうなる曲、小気味良いミディアムテンポの曲、伊東たけしのアルトが泣かせるドラマチックなバラードなどなど、安心して楽しめる楽曲がいつものようにきれいに並んだ約42分。
でもね、安藤正容のギュイ~ンや伊東たけしのEWIのピロピロ~も9曲ひっくるめて、それ以上でもそれ以下でもない、良くも悪くもスクェア印なわけで、DISCOVERIES=『発見』というタイトルの割には無難すぎる印象。せっかく若くて腕の立つメンバーがいるんだから、もっと思い切って暴れさせても良かったような気はするんだな~。そこら辺はもう守りに入っちゃってるのかね。。。
冒険や挑戦なくして新たな発見はないだろう!と、30年の節目を越えた今が惰性でないことを願いつつ、ここはひとつ率直な感想を書いておく。
こりゃ36枚目に期待だな。

ベストトラック
8.かわらぬ想い
9.Smile Smile Smile
1.Discoveries

こちらで試聴できます


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30th Anniversary Live/松原正樹 [FUSION]

ギタリスト松原正樹がプロデビュー以降35年間で参加した楽曲は一万曲にもなるらしい。
いったい何枚のアルバム、何人のミュージシャンの楽曲に参加してきたのだろうか。

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フュージョンという極めて狭いジャンルの音楽にとどまらず、何気に聴いているCDのクレジットに目をやり、その中から松原正樹の名前を見つけるのは、確かにそんなに難しい作業ではない。今更ながら驚くべき守備範囲の広さだ。おそらくだが(特に昭和生まれの)これまで少しでも熱心に音楽を聴いてきた人で、松原正樹のギターを聴いたことが無いという人はいないんじゃないか、とさえ思える。これはスタジオミュージシャンとして大いなる勲章と言っていいだろう。一万曲という楽曲参加も勿論凄いが、松原正樹のギターが日本のポピュラーミュージックのレベルを大いに引き上げる貢献をしたのは間違いないだろうと思う。
レコーディングという限られた時間の中で、スコアや歌詞からその楽曲の匂いを嗅ぎ取り、バッキングでは楽曲に溶け込み主役の力を引き出し、ソロでは主役を喰ってしまわないように(喰おうと思えば喰える主役も大勢いただろうが)難解な自己満足に走ることもなく聴き手のツボを押さえる。そんな所謂『職人芸』には、『指が速く動く』とか『強烈な個性を持つ』というだけでない、あらゆる楽曲に彩りを与えることが出来る何かがあるのに違いない。

松原正樹のソロデビュー30周年を記念して、2008年11月に行われたSTB139でのスペシャルライブは、即日完売の大盛況だったそうだ。日本の音楽ファンのツボをギターでさりげなく刺激し、影から魅了し続けてきたギタリストが本作での『主役』。ライブの為に集結した、今剛(g)、岡沢章(b)、井上鑑(kb)、渡嘉敷祐一(ds)、斎藤ノブ(prc)ら豪華な脇役は、やはり日本の音楽を支えてきたベテラン達。爽快に飛ばす『BEYOND THE BOUNDARIES』、三連のシャッフルが心地よい『DA BA DA』と、ギターフュージョンのお手本のような楽曲が続く前半から、佐藤竹善(これまた上手い!!)らヴォーカルを迎えた中盤は今剛とのツインギターのカッティングが炸裂するシティポップ&AOR大会だ。松原正樹のサイドマンとしての真髄を堪能できる。そして後半は再びSNIPERHERCULESといったインストのパワーナンバーを、これでもかと披露したライブの完全収録。僕はCDを買ったが、DVDにすればよかったと後悔している。

数々の名曲の誕生に脇役として一役買ってきた技術と貫禄、一本のギターで飯を食ってきたという揺るがぬ自信が詰まった19曲2時間強は、これまでの膨大で地道な仕事が咲かせた大輪の花のようだ。
むしろプロを目指す若いギター小僧に聴いてもらいたい。正座して聴くべし。

ベストトラック
disc2-1.EYE SHOT
disc2-9.HERCULES
disc2-3.BE YOU




 


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As We Speak/David Sanborn [FUSION]

僕は決してお金持ちではないが、若い頃と比べると月に何枚かのCDを自由に買える年齢にはなった。
CDを取り巻く世の中も変わった。家にいながらネットでCDを物色して注文と支払いまで出来る。こうやってビールを飲みながらパソコンで遊んでいるうちに家にCDが届くなんて、便利になったものだ。
素晴らしい演奏が詰まったアルバムに出会えることが若い頃と変わらず嬉しい反面で、そうでなかった作品は、たったワンフレーズすら印象に残らぬまま棚の中に埋もれ、パソコンのHDの中に圧縮したまま忘れて行く。
音楽に興味を持ち始めた中学生の頃、僕にとっては高価だったレコードの一枚一枚・・・そういえば一枚のレコードのために必死で小遣いを貯めたり、レコード店に行っては数枚の中から一枚を選ぶのにえらく時間をかけてたっけ。

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で、このCDのハナシなんだけど、今年の2月頃にAmazonで注文した時の価格が799円。あまりに安かったので思わずカートに入れちゃったんだけど、そりゃ輸入盤なので円高やら何やらで価格の変動ってやつは多少あるにしても、新品で千円を余裕で切ってしまう値段にはびっくり。
それが、さっき同じ商品を同じAmazonで見ると、1522円になってるわけ。
まぁ、安く買えたので文句はないっすけど、たった2ヶ月の間でほぼ倍額に跳ね上がってるの見ると、『CDの正味の値段っていくらなの?』とは思う。

『As We Speak』を初めて聴いたのは、フュージョンにはまり始めた中学生の頃だったかな。買ったのはもちろんLP盤。『ささやくシルエット』なる(当時は)お洒落な邦題や、肩パットを装着したようなサックスを持つ男の影のイラストなんかはズバリ80年代って風情なわけだが、サウンドも然り。
でもこのアルバムは、僕にはあまり印象に残らなかったっていうか、少なくとも鳥肌が立ような内容のアルバムではなかったし、何度も繰り返し聴いたような記憶もない。CDを買いなおしたきっかけは799円という破格値に他ならないわけだが、そうでなければ、かなりの高確率で二度と聴くことも無く一生を終えていたんじゃないだろうか。僕にとってこのアルバムはそんな一枚にすぎなかった。

ところがどうだ、四半世紀の時を隔てて、むしろ初めて聴くような気持ちでCDを回し聴いてみたら、自分でも不思議なくらいによく覚えているものだ。
楽曲のイントロやソロのフレーズはもとより、サンボーンにしては極めて珍しいソプラノのプレイや後ろで暴れまわるマーカス・ミラーのベース、A.O.R.丸出しで歌うマイケル・センベロ(懐)のヴォーカルなどなどが、当時好きで繰り返し聴いていたアルバムと同じように、ひとつひとつ思い出されるのだ。

ガキの頃と今の、アルバム一枚の重み……
もしかしたら、音楽の聴き方は、今よりもあの頃の方が上手だったのかもしれない。

ベストトラック
7.Straight to the Heart
1.Port of Call
9.Love Will Come Someday


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【blog一周年】 Straight to the Top/渡辺貞夫 [FUSION]

今日4月1日はエイプリルフールでありますが、当ブログの満一歳の誕生日でもあります。
ここはひとつ一周年の記念と致しまして、コメント・nice先着5000名の皆様に、豪華記念品をプレゼント致します。

・・・・・うそです(笑)

でも、このブログを始めて今日でちょうど一年になるってのは本当なんですね。
いつも見に来て下さる方々…コメントとniceを下さる方々…うっかりと偶然に来てしまった方…
ほんとうにありがとうございます。
まー、これからもマイペースに細々と、好きな音楽の事を中心に続けて行こうと思います。

なので今日は、この地上に星の数ほどもある楽曲の中で、僕が一番好きな曲のことを書こうと思います。


 
これまで色々なミュージシャンの音楽作品を書かせて頂いてきたが、記事として最も多く取り上げたミュージシャンが渡辺貞夫。ご存じ世界のナベサダと呼ばれる、日本の誇るジャズサックス奏者だ。
僕が最も憧れ、敬愛しているミュージシャンであるナベサダの輝かしい経歴や、日本のジャズ界にもたらした計り知れぬ影響はここでは省くが、御年76歳にして衰えぬ気力で国内だけでなく、世界中で演奏活動を続けている。『音楽で人を幸せにする』というプロ根性や『自らの音に対する責任感』のようなものには、ただ驚かされるばかりだ。
 
上で貼り付けた『Straight to the Top』という曲は、アルバム『Orange Express』に収録されている。作曲は渡辺貞夫ではなく、『California Shower』をはじめとしたフュージョンの諸作や武道館公演でのサウンドパートナーだったDave Grusin。爽やかなメロディに、R.ティー、E.ゲイル、M.ミラー、B.ウィリアムスら超一流セッションマンを惜しげもなく配置し、ホーンセクションとストリングスまでちりばめた豪華絢爛なアレンジは、ナベサダとDave Grusinによる共同作業で作り上げてきた当時のナベサダフュージョンのまさに頂点。非の打ち所なし、突っ込みどころなし。

下の画像はその『Straight to the Top』の楽譜の一部。このページは、2分15秒くらいから始まるアルトソロの部分なのだが、波線が無造作に書かれてあるだけで音符が殆ど無い。サックスを吹き始めて初めて買った楽譜がこんなのだったので、かなり驚いた。ナベサダのサックスの楽譜が欲しくて買ったにも関わらず、肝心の音符が書いてないなんて・・・・と、高校生だった僕はすごく損をした気になったものだ。
これがジャズやフュージョンの大きな魅力のひとつである『アドリブ演奏』だというのを知るのに時間は掛からなかったが、この曲を全て吹けるようになるには、かなり時間が掛かった。初めて楽器を手にしてから7年ほど経ってからだった。
 
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思えば少年の頃に音楽に目覚め、聴くだけでは飽き足らずにアルトサックスを手にしたのも、ジャズやフュージョンといった音楽が大好きになったのも、そして今こうして不肖ながらも音楽ブログを書いているのも・・・僕の音楽に関する全てはナベサダの音楽、特にこの『Straight to the Top』から始まり、広がって来たのだと、一瞬たりとも迷わずに言うことが出来る。これまで何百回聴いたかわからないのに、今でも変わらぬ感動をもたらしてくれるのだ。

もしも僕が、音楽を趣味にしなくなる時が来るとしたら…それは、この曲を聴いて何も感じなくなった時なのだろう。


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Prime Time/Chicken Shack [FUSION]

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夜の都会、酒場にて・・・

『ねぇ、これからどうする?』

『送るよ・・・・』

『あたし・・・・飲みすぎちゃったみたい・・・』

・・・・・・・(男、無言でグラスを空ける)

『出ようか・・・・』

・・・・・・・(女、無言で俯く)

店を出るふたり・・・・そして・・・

♪ぱっぱ~ ぱ~ら~ら~ ぱ~らら~♪…

いやまぁ、なんだ。。。貧弱な想像力を膨らませて書いたから、ちょっと恥ずかしいんだけどね、大人のオトコとオンナの恋ってこんな感じだったでしょうかね。え?女房と?わはは、もう忘れちゃったよ~昔のことだから。
想像力豊かな方は、とりあえず下に貼ってある曲を聴いてもっと膨らませちゃって下さい。

サックス奏者土岐英史とギタリスト山岸潤史ら国内の実力派ミュージシャンで結成されたチキン・シャックのライブアルバム『プライム・タイム』。今は閉店中の名店『六本木ピットイン』で録音された2枚組みの本作は、個人的に国産フュージョンのライブアルバムとしては屈指の名演奏だと思っている。

チキンシャックに出会ったのは高校時代。
16ビートのリズムと煌びやかなシンセに、からっとしたディストーションギターとサックスが乗っかって16分音符のキメを予定調和的にキメる・・・当時は群雄割拠の様相だった日本のフュージョンシーンではそんな演奏が流行ってたし、僕も大好きでバンドで演奏もしていた。殆どのバンドやソロプレーヤーが『夏、海、砂浜、ドライブ』といった爽やかな作品イメージを前面に出してセールスを上げていた中で、チキンシャックはR&Bやソウルミュージックのラブソングを随所でカヴァーするなど、少しというか、かなり毛色が違って聴こえた。
スマートなオリジナル曲は夜の都会をイメージさせ、バラードはどこまでも切なく甘い・・・

『ガキんちょはお家に帰りな』・・・

チキンシャックの演奏には、そんな場違いな雰囲気というか、オトナの色気がむんむん漂っていた。それは、当時の和製フュージョンの主流だった『スカッと爽快』ではなく、しっとりと濡れた感じ。沼澤尚とボビー・ワトソンが繰り出す、腰に来るようなファンキーなリズムに包まれながら、むせび泣く土岐英史のサックスに山岸潤史のブルージーなギターが絡みつき互いに高揚していく……こりゃもう『エロい[キスマーク]としか言いようが無い程に官能的な音楽の交歓だ。このジャケットからしてな~んか想像させるでしょ?

夜の都会はオトナだけの特権だった・・・チキンシャックは、そんな時代の『エロかっこいい』フュージョンなのだ。

ベストトラック
disc2-3.Reunited
disc1-2.A Silent Love
disc2-4.Flowers For Lena




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Invitations/Shakatak [FUSION]

人様の書かれているブログを、つらつら読むというのも楽しいもので、最近いくつかのブログにお邪魔しては、たまにコメントを書かせて頂いたりしています。
更新を楽しみにして読ませて頂いている幾つかのブログの中で、音楽ネタに関してはロック系、ジャズ系を問わず出色の面白さなのが土佐のオヤジさんのブログ。先日は古いフュージョンアルバムの何枚かを記事にされていたので(こちら)、懐かしくって無性に聴きたくなってしまいました。アルバムはシャカタクの3作目『Invitations』

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このブログで書いている音楽のアルバムって結構古いのが多くって、だけどそれらは『僕の中ではどっこい生きてる』つうか『まだまだ現役』だったりするんだけど、こりゃなんだろ…あんまり上手く言えないっすけど、背伸びしてカッコばっかりつけていた若い頃の写真…それも『かなり恥ずかしい写真』を、不意に見つけて人知れず赤面しちゃったような気分でしょうか?これは。


大ヒットとなった『Night Birds』に続いて、正々堂々と2匹目のドジョウを狙い、本作もそれなりにヒットしたわけだけれども、『Night Birds』の雰囲気を踏襲しながら更にオサレに洗練させたような印象でございますが、なんつったってバブル華やかなりしあの時代ですから、『この古臭さが、今は逆に新鮮で云々』な~んて誉めてるんだか貶してるんだか判らんような無難なコメントに落ち着くには、まだ中途半端な年月しか経ってないし、正直そのような感想は微塵もありませんで、良くも悪くも、ただただひたすらに『なんとなくクリスタルでカフェバーな80年代』の、あの『目くるめくオサレなフュージョンサウンド』でございます。タイトル曲『Invitations』なんかは当にそれ。

とはいえ、『Invitations』にしても『Night Birds』にしても、発表以来ずっとShakatakのエバーグリーンであり続けているわけで、透明感のあるギターやピアノで奏でる流れるようなメロディににフワーッと女性ボーカルやコーラスが入ってきて…といった手法は、今ではすっかりSmoothJazz系のひとつの王道パターンに定着しているし、楽曲そのものの完成度はやっぱり高いものなんだとは思う。こういった聴き易さや、さやさは、その時代が求めていたモノなんだろうし。

まぁ、なんだかんだ言いながらも僕はこの手の80年代サウンドも大好きだったりするんだよね。その頃に多感な時期を過ごした者としては。

だから、スーパーや交通情報のBGMだとか言っちゃダメなんだよぉ。ピッタリなのは認めますけどね(笑)

ベストトラック
1.Invitations
6.Usual Situaton
3.Lonely Afternoon


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Access All Areas/Spyro Gyra [FUSION]

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スパイロ・ジャイラの『OLD SAN JUAN』(邦題:遥かなるサンファン)という曲が大好きで、特に本作『Access All Areas』(邦題:ライブインフロリダ)のオープニングを飾るライブバージョンが素晴らしい。
それまでの爽やか+キャッチー+哀愁=日本人好みといった方程式で人気者となったスパイロのサウンドとは一味違ったドラマチックな曲調に惹かれて、学生の頃にひとりシコシコとコピーに勤しんだ記憶がある。
その1984年リリースのライブアルバム『ライブ・イン・フロリダ』のCDが、Amazonでかなり安い値段だったので、迷わずポチっといってしまった。
本作は『モーニングダンス』や『シェイカーソング』といった代表曲が名を連ねた、初期のスパイロの総決算のようなライブアルバムで、当初はアナログレコードの2枚組で発売された。レコードは今でも大事に持っている。

スパイロ・ジャイラは、バンド形態でありながらアルバムのレコーディングではメンバーよりも遥かにネームバリューの高いゲストミュージシャンを集めて録音するという、僕にとってはちょっと不可解なバンドでもあった。S.ガッドやW.リーといった豪華なゲストミュージシャンが、バンドのメンバーの代わりにクレジットされているのを見ると、『このバンド、実はあまり上手じゃないんじゃないの?』みたいな素朴な疑問を感じたものだった。
しかし、このライブアルバムでは、そんな下衆の勘繰りを吹き飛ばすが如く、リーダーのジェイ・ベッケンスタイン(sax)はもちろんのこと、スパイロのサウンドに欠かせないデイヴ・サミュエルズのスピード感に満ちたマリンバをはじめ、トム・シューマン(kb)やキム・ストーン(b)、チェット・カタロ(g)らのメンバーが、その演奏力の高さとバンドとしてのライブでの実力を見事に証明していて、実に痛快な演奏が繰り広げている。初めて聴いた時は、どちらかというと個々の演奏よりも楽曲に重点を置いて、タイトに纏められた印象が強いスパイロの楽曲が、ライブになるとこんなにも違った姿に生まれ変わるのかと、かなりビックリしたものだった。

さて、それが先日届いたわけですよ!あ~懐かしいな。。。
ビニールを丁寧に開封しケースを空ける。CDでは一枚にまとめられたようだ。プレーヤーにセットしてスイッチオン。。。
スピーカーから出てくる音よりも先に、お目当ての『遥かなるサンファン』のイントロが脳内に流れ。。。
。。。。。ん?


流れてきたのは違う曲。LPならA面2曲目に入っていた『シェイカーソング』だった。
再度CDケースを手にとって、曲目を見る。

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・・・・・見事にカットされていました。ちゃんちゃん(ToT)

CDの曲目は事前によく確認しましょう。

ベストトラック
side1-1.Old San Juan
side3-1.Conversations
side3-3.Morning Dance
※LPレコードでの曲順です。Old San JuanはCDには収録されていません。

カットされてた『Old San Juan』曲です。。。なかなかいい曲と思いません?

 

 


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Good Morning/増尾好秋 [FUSION]

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なんかね、めちゃいい人なんだろうな~と、聴いていると思ってしまうわけです[ひらめき]

人は見かけによらないのは、ミュージシャンだって例外ではない。豪放なテナーを吹く人がこそこそと麻薬をやっていたり、変拍子が大好きなドラマーが規則正しい生活をしていたり、どんな楽器も弾きこなすマルチミュージシャンが女には不器用だったり、ストイックな歌を唄うシンガーが実は絶倫だったり、大金持ちだと思ってたプロデューサーが金欠で詐欺をはたらいていたり。。。。まぁ、ミュージシャンだって色々なわけで、ジャズに限らずロックでもポップスでもクラシックでも、優しい音楽を奏でる人が、天使のように優しい人かどうかは分からないし、激しく猛り狂う音楽を作る人が、ひときわ怒りっぽい人だとは限らない。

だいいち、そんなミュージシャンの人間性まで真剣に考えながら聴いていると、そのうち軽く人間不信からくるノイローゼにでもなってしまいそうなのだが、スピーカーから流れてくる音楽に、どうしようもなくそのミュージシャンの人柄とか温もりみたいなものを感じ取ってしまう音楽だってある、というのも事実だ。
『GOOD MORNING』とタイトリングされているのとおり、朝の光を浴びながらトーストをかじりつつ聴くのが最も合っているのかもしれないが、昼食後に少し眠くなったときや、進まない車の渋滞に閉じ込められたとき、夕刻に暮れて行く空を眺めながらでもこのアルバムは良いと思う。
適度な爽やかさと、過剰でない温もりと…そして、いつか何処かで聴いたことのあるような、何気に懐かしいメロディとギターの音色が、様々なひと時を心地よく満たしてくれるようなアルバムだ。
『まぁそんなにイライラしなさんな』。

ベストトラック
1.(I’M STILL)BELIEVING IN DREAMS
2.GOOD MORNING
7.LITTLE BIT MORE




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NHK総合テレビ 「T-SQUARE 30th コンサート」 [FUSION]

30周年を迎えたT-SQUAREのライブが、先日NHK地上波で放送されていたので見ていました。

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Guitar:安藤正容・みくりや裕二

Sax & Ewi:伊東たけし・宮崎隆睦
Keyb:宮城純子・和泉宏隆河野啓三
Bass:中村裕二・田中豊雪・須藤満
Dr & Per:仙波清彦・河合マイケル・長谷部徹・則竹裕之・坂東慧

■Medley 2008~
Rockoon
A Feel Deep Inside
Lickin’It
Flying Colors
Friendship
Banana
It’s Magic
Megalith
Full Circle
A Dream In A Daydream
Kimi Wa Hurricane
風の少年
Jubilee
Mistral
Knight’s Song
Celebration
Adventures

■Midnight Lover
■Islet Beauty
■2008オレにカマわずゆけ
■Texas Kid
■Omens Of Love
■Truth


昨年の春に『T-SQUARE Super Band』の名前で記念アルバム『Wonderful Days』を発表した時は9人編成で、今回のライブは総勢15人。すごいですねー。野球チームどころか、今度はラグビーのチームができるぞ(笑)。
冗談はおいといて、見ていて先ず目を奪われたのが5人のドラマーたち。ずらりと向かって左から仙波師匠、マイケル河合、坂東慧、則竹裕之、長谷部徹。カメラアングルによっては、ドラムスクールの生徒さんみたいで壮観(笑)。ステージ後方には左にTHE SQUARE時代、右にT-SQUAREになってからのバンドのロゴが、ウィナーズフラッグのように掲げられている。
いやー良い眺めです[ぴかぴか(新しい)]

番組はリハーサル中のメンバーのコメントを交えながら進行するわけだが、それにしてもアップで見ると皆さん老けちゃったなー。そりゃファンも年取るわけだわ(笑)。かと思えば、僕より年下のメンバーも何人かいたりして、そこらへんがバンドの歴史の長さを物語っている。
見所はなんといっても、しょっぱなから投入される17曲のメドレー。新旧入り乱れたかたちで繋げられたあの曲この曲には、若い頃に練習して文化祭やライブで吹いた懐かしい曲もあったし、こうしてメドレーで聴いていると、改めてスクェアの楽曲のバリエーションの豊富さと、それでいて安藤正容の秀逸な楽曲のメロディーを軸にした一貫して変わらない部分が上手くバランスされた実に良いバンドだなと思う。
しかしながら、最初から演奏を観ていて思ったのは、スクェアのライブって、こんなに緩かったっけ?…ということ。
デビュー30周年の記念、日比谷に集まったファン3000人と歴史を彩ってきたメンバーとの一夜限りのお祭り・・・・なのはわかる。もちろん相変わらず演奏も上手いし、曲もいい。にもかかわらず、な~んか緩いのだ。そりゃまぁ初期の曲は緩めのが多いけど(笑)、曲調のことではない。少なくともメドレー全曲を含めて、今回放送された演奏を見る限りでは、残念ながらこの思いが払拭されることはなかった。
かつて東西の横綱としてカシオペアとともに日本のフュージョンの先頭に立ち牽引してきたスクェア。もはや国内ではこれといったライバルも追随者も見当たらない孤高の存在となった今、画面越しに伝わって来たものは、ただ生暖かい懐古だけでしかなく、覇気を伴った熱いものを感じとれなかったのは、僕が変わったからなのだろうか?
それでも、僕がスクエアに熱中しだした頃のドラマーの長谷部徹とベースの田中豊雪の元気そうな姿がたまらなく嬉しかったし、『Megalith』『A Dream in a Daydream』といった参加が叶わなかった元メンバー、サックスのあの人やキーボードのあの人の代表曲をメドレーにきちんと盛り込んでいるあたりに、T-SQUAREというバンドのファンに対する『生真面目さ』を感じたりで、前述の意地悪な感想やそんなこんなをひっくるめて、感慨深くかつ楽しく見ることができた。

今後も35周年~40周年と、歴史を積み重ねてステージに立つミュージシャンは何人になるのだろうか?あと3人増えたら、とりあえず野球の試合ができますな(笑)。


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